自分はイヤホンで聞く音楽が実は好きだ。
大きなスピーカーの前でじっとその間を見つめながら聞くのも好きではあるけれど、すごく集中するし、疲れる。なまじそういう仕事もしているからか、家にいてもどうしてもそういう風に聞こえてしまう。
音を仕事にしている人は多分何かを聞いているのではなく、何かを聞かないようにしているのだと思う。
音響をやっていても曲の良し悪しは聞かない。ライブをしていても今誰がどこをどう間違えたなんて探して聞かない(聞こえてしまうことはよくある)。
そうやってボーっと聞いていると音に隠れて入ってくる情報を制限することで普通に聞いている人には聞こえない音をたどっているように感じる。
仕事病とかいうと偉そうだけれど、ついそうやって聞かないことを前提に音を聞いてしまう。
イヤホンを耳にかけて出かけてみる。景色は変わり、中途半端な音質と町の雑音が混ざって100回聞いたって同じ結果にはなれない。
何かに溶けていくように、あるいは溶かすように音楽を楽しんでいる。
自分の音源もそんな風であってほしい。