ずっと冷めているように見える。
10代のころにライブハウスまで遊びに行って聞きこんだバンドたちのことを思い出した。
当たり前だけど、バンドは一人ではできない。メンバーが集まらなくて集まらなくて集まらなくて、目の前で汗だくになってるバンドのことを前売りチケット握りつぶしながら見ていた。悔しいんだか楽しいんだか。一秒でも早く俺もそっち側に行きたかった。焼け付くような照明を浴びてみたかった。そこから数年経ってようやく自分の夢の一粒が叶う。
自分が作った歌を人の前でやる、いわゆる初ライブのことは昨日のことみたいに覚えている。
移転して間もないネバーランドで聞いたこともないバンドの解散ライブのイベントだった。そんな特別な日にもかかわらずお客さんは10人もいなくて、ただカッコつけたリハーサルみたいな景色だった。それでも当時の自分たちより解散バンドはうまく演奏していた。
舞台には慣れてる方のつもりだった。何度か人前で歌ったことがあるし、ストリートごっこもやったし、吹奏楽経験だってあるんだから。今更ステージにおびえるなんて。あははと。
ただでさえ暗いフロアの向こうから自分を照らすピンスポが視界を殺す。のぞき込んでやっと見えた闇に引きずられそうになる。足がついてるのか浮いてるのか。自分は今どこを見てる。何をしている。体験したことのないドローっとした汗が身体中から噴き出る。あんなに、あんなに練習したのに。
いやぁ今思い出しても汗かくなぁ。
でもあの汗がなかったら秒で辞めてしまってたんだろうな。
あのトラウマごと引きずってまだステージに立っている。
良くも悪くも。